【中受02】雑草はなぜそこに生えているのか ~稲垣栄洋/著~

 

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再読推奨度(☆1:小~☆5:大)

☆☆☆

難易度(☆1:優しい~☆5:難しい)

☆☆☆☆

 感想 

 雑草がテーマだけあって、草木や自然に強い興味を持てていない自分にとって、用語や成長過程の説明などが頭に入ってこず、読解が難解であった。しかし、普段興味の持っていなかったテーマであることで、自身の認識、視野を広げることができました。同じように草木に興味がない方に、特に一読をお薦めします。

作中引用(感情が動いた文言等)

  • 世の中にはわかっていないことがたくさんある。わからないことだらけなのだ。わからないことがわかったときの喜びが理科の醍醐味であるならば、じつは、理科の教科書の外側の部分にこそ、面白さがあるのである。
  • もしかすると若い皆さんにとって、教科書で勉強することはつまらないことに思えるかも知れない。しかし、教科書の外側の部分は、教科書を勉強することによって初めて見えてくるものなのだ。
  • 弱い植物である雑草の基本戦略は「戦わないこと」にある。強い植物がある場所には生えずに、強い植物が生えない場所に生えるのである。言ってしまえば、競争社会から逃げてきた脱落者だ。
  • 競争に強いばかりが、強さではない。じっと耐える強さも、また「強さ」なのである。
  • 「冬が来なければ本当の春はこない」
  • バラバラであるという性質は、人間の世界では「個性」と呼ばれるものかも知れない。雑草の世界では個性がとても重要なのだ。
  • 生きていく上で「変えてよいもの」と「変えてはいけないもの」がある。変えてよいものに固執して、無駄なエネルギーを使うよりも、変えてはいけない大切なものを守って行けば良いのだ。
  • チャレンジすることは、失敗することである。しかし、チャレンジすることで変わることができる。「Challenge & Change(チャレンジしてチェンジする)」である。
  • 科学技術はもろ刃の剣である。正しく用いれば人類に豊かさをもたらすが、使い方を誤れば人々に危害を加える。包丁も料理に使うには便利だが、人を殺めることもできるし、自動車は今ではなくてはならない乗り物だが、操作を誤れば殺人マシーンともなる。科学技術が進めば進むほど、それを使う人類を正しい判断が求められるのである。
  • 「踏まれたら、立ち上がらない」というのが、本当の雑草魂なのだ。しかし、「雑草は踏まれても踏まれても、必ず花を咲かせて種子を残す」。大切なことは見失わない生き方。これこそが本当の雑草魂なのである。
  • すべての生物はナンバー1であると同時に、オンリー1なのである。このナンバー1になれるオンリー1の場所を生態系では「ニッチ」という。
  • 個性を磨くときには、「こうあるべき」という常識を疑って、捨ててみることも大切だろう。
  • もっとも簡単にナンバー1になれる種目は、「あなたらしさ」である。もっともやってはいけないことは、人と比較することだ。全ての生物は、そうやってずらしながら、ナンバー1になれる「ニッチ」を求めているのである。
  • 但し、「一人勝ちでは生きていけない」「助け合った方が得である」これが、激しい競争社会の中で三五億年の生物の進化が導き出した答えである。
  • これは生物の種の話であるが、私たち人間の世界もきっとそうなのだと私は信じている。この世に生まれた誰もが、どこかでナンバー1であり、どこかでオンリー1の役割を果たしている。そして誰もが欠けてはならない存在なのだ。
  • あなたは幸運である。この世に生を受けたことが幸運なのだ。多少、運が悪いと思ったり、嫌なことがあっても、あなたは幸運の一粒なのだ。
  • もう宝くじが何回当たったよりも、ずっと低い確率であなたは存在している。これはまさに奇跡である。あなたはそれほどの幸運の持ち主なのだ。そして、私たちは生を受けることのなかった多くの存在の代表として、この世に生きている。
  • この世に存在するすべての生命が、ほんの偶然で今の時代に居合わせている。それは、食べたり食べられたり、競ったり奪い合ったりしているように見えるかも知れないが、すべてが奇跡のような命の輝きなのだ。
  • 「教える力」と「教えない力」を意識している。教わらないことの方が学ぶことが大きいときもあるのだ。
  • 中途半端に知っているだけでは、わかりやすく教えることはできない。深く詳しく知って、初めてわかりやすく教えられるのだ。
  • 若いときには、一つの道を進むのもいいが、色々なところに寄り道しながら歩くのも悪くない。
  • サッカーボールを蹴るときも大切なのは「蹴る方の足」ではなく、「軸足」である。「雑草学」が私の軸足だった。この軸足があるから、私にとってはどんな勉強も、「雑草学」を深めるものだったのである。

ーおわりにー

  • 若い皆さんにとって、人生は長い。
  • 未来のことは誰にもわからない。だから、雑草は選択肢を絞ることなく、たくさんのオプションを用意して未来を待ち続けている。昨日今日のことでくよくよする必要はない。来るべき未来に備える心構えが必要なのだ。
  • そして、まっすぐな道などない。色々なことが起こるのが人生だ。しかし、それも人生の愉しみである。道ばたの雑草をみてほしい。まっすぐに育っている雑草など一本もない。雑草の生涯になってさまざまなドラマがあるのだ。
  • そして、私たち大人が振り返ると、人生は短い。
  • 私の祖母は「少年老い易く学成り難し(若いと思っているうちにすぐ年をとってしまうが学問はなかなか成就しない。寸暇を惜しんで勉強せよということ)」と口癖のように言っていた。まだ若かった私は、この言葉の実感がわからなかったが、今はこの言葉を痛感している。
  • 私もまた、若い読者の皆さんに、最後の言葉として、同じ言葉を贈ることにしたい。